【フードドライブ】フードバンクとの違いや食品ロス・SDGsへの効果

フードドライブとフードバンク

「買いすぎて食べきれなかった」

「もらったけど好みに合わなくて」

そんな理由で、まだ食べられる食品がたくさん捨てられています。

日本で発生する食品ロス半分近くが、一般家庭から出ています。食品ロス削減には、生産者や販売者だけでなく消費者の協力も不可欠なのです。

そこで今、家庭で余った食品を有効活用するフードドライブという活動が広がっています。

あなたが消費しきれない食品も、誰かの役に立つかもしれません。

この記事を読めば、フードドライブとはどういう取り組みで、どんな効果があるのか、またフードドライブに向いた食品や活動への参加方法などもわかります。

まずは知ることから始めてみませんか?




フードドライブとは何か?フードバンクとの違いは?

フードドライブとは

フードドライブとは何か

フードドライブとは、未利用食品を寄付する活動のこと(drive=活動)。発祥の国であるアメリカは、すでに60年以上の歴史を持っています。

日本も、遅ればせながらフードドライブが活発化してきました。

具体的に何をするのかというと、主催者(自治体、企業その他)が各家庭で余っている食品を集め、フードバンクや評議会などの団体に寄付したり、福祉施設や支援を必要とする人たちに直接届けたりします。

商店街・自治会などのイベントや学校行事の一環としてフードドライブが行なわれるケースも増えています。

寄付を受けた団体は、それらの食品を必要とする人々に無償で配布します。

フードドライブの対象になる食品は、賞味期限が残り2か月以上あるもの、未開封で常温で保存できる食品です。

フードドライブとフードバンクの違い

フードドライブとフードバンクの違い

フードドライブフードバンク、名称が似ていますよね。

「両者の違いがわからない」という人のために、それぞれの機能や役割の違いを説明しましょう。

まず、フードドライブとは家庭で余った食品を持ち寄り、寄付する活動そのものをいいます。

フードバンクは、おもに農家、食品関連企業などから規格外の食材・食品や賞味期限が近づいた食品などの寄付を受け(一般家庭からの寄付もあり)、福祉施設など食を必要とする人々に配る組織のこと。また、その活動を指すこともあります。

フードバンクは、社会福祉法人やNPO法人などの形態で運営され、寄付を受けた食品の安全性や品質の確認、保存、管理、運搬なども担っています。

フードドライブの実施団体が、直接福祉施設などに届けるケースもあります。しかし、やはり負担が大きいため、フードバンクとの連携が望ましいとされています。

フードドライブとフードバンクの連携のメリットは、家庭で余ったたくさんの食品も、必要とする人々に効率よく確実に届けられることです。

フードドライブの目的や効果を知ろう

フードドライブの目的

フードドライブの目的

フードドライブの目的は、食品ロスと貧困問題の解決です。これはフードバンクの目的と共通しています。

まず、日本の食品ロスの現状を見てみましょう。

農林水産省及び環境省「令和3年度推計」によれば、日本の食品ロスの量は523万トン

これは、世界中で飢餓に苦しむ人々への世界の食料支援量(2021年で年間約440万トン)の1.2倍に相当し、国民一人当たりでは、お茶碗約1杯分(約114g)の食品を毎日捨てている計算になるとのこと。

gakei
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一人ひとりが1か月でお茶碗約30杯、1年で約365杯の食べ物を捨ててる。もったいないの一言ですよね。

一方で、日本では約1600万人が相対的貧困に陥っていて、食料の確保に困っている人々も少なくありません。

こうした状況をふまえ、フードドライブは主に「家庭で余った食品の有効活用」という方法で、課題の解決を目指しています。

フードバンクは「フードドライブから寄付された食品や、農家や企業などから寄付された食品・食材の有効活用」という方法で、同じ課題に取り組んでいるのです。

日本では「食品ロスの削減の推進に関する法律」(略称 食品ロス削減推進法)が令和元年10月1日から施行され、フードドライブやフードバンクの活動を支援する体制も整ってきました。

一般の人が誰でも参加できるフードドライブは、これから食品ロス削減に大きく貢献していくことが期待されているのです。

フードドライブの効果

フードドライブの効果は、経済的効果・社会的効果・環境的効果の3つの側面があります。

経済的な効果

家庭で余った食品の有効活用は、食品ロスで発生する廃棄コストや税金の節約につながります。食品を受け取る側も、経済的な負担を軽減できます。

社会的な効果

援助を必要とする人々の健康面や生活面の向上につながります。また、寄付する側と受け取る側の間に連帯感や協力関係が生まれます。

環境的な効果

フードドライブによって食品ロスが削減されることで、食品の廃棄で発生する温室効果ガスの発生やムダになる水資源の量も減り、地球環境の保全につながります。

さらにつけ加えると、各地で行なわれるフードドライブは、フードバンクなどと連携してその地域の団体や人に食品を届けます。

したがって、地産地消(地元で生産して地元で消費すること)と同じく、輸送費の削減環境負荷の軽減などのメリットも得られるのです。

自治体や企業のフードドライブへの取り組みは?

フードドライブへの取り組みは日本でも活発になってきました。事例の一部をご紹介します。

東京都のフードドライブへの取り組み

東京都は食品ロス対策の一環として、都内の市区町村などと連携してフードドライブを推進し、フードバンク経由の寄付活動を行っています。

また、フードドライブ以外にも、サーキュラーエコノミー(循環経済)への移行につながるさまざまな取り組みを進めています。

具体的な活動としては「食べきり協力店」(食品ロス削減に積極的な飲食店等の登録・支援制度)、「リサイクルセンターでの再利用・リペア活動」、「リユース食器・容器の利用促進」などがあります。

出典:TOKYOサーキュラーエコノミーアクション | 「区市町村の取り組み」

神奈川県のフードドライブへの取り組み

神奈川県も積極的にフードドライブに取り組んでいる自治体のひとつです。

神奈川県のWebサイトからは、フードドライブに参加したい人や、自ら実施したい企業や団体に役立つさまざまな情報が入手できます。

入手できる情報は、「神奈川側県内の食品を持参できる場所」「県内のフードドライブ実施企業・団体及び市町村一覧」「フードドライブを実施するには」など。

出典:SDGsアクションに向けたフードドライブ活動の実践 - 神奈川県ホームページ (pref.kanagawa.jp)

また、横浜市ではフードドライブを実施する企業や団体の支援も行っています。

フードドライブのマニュアル(実施方法)を公開しているほか、フードドライブの実施に必要な物品の貸し出しも行い、市内でフードドライブ活動を行う企業・団体名を市のホームページで紹介しています。

出典:フードバンク・フードドライブ活動の推進 横浜市 (yokohama.lg.jp)

企業や団体によるフードドライブへの取り組み

民間のフードドライブの実施例も見てみましょう。

スポット的に行なわれる例は数えきれないほどありますが、継続的かつ大規模な例も出てきています。

大手小売店では、無印良品ファミリーマートがとくに積極的です。

無印良品は2020年12月、東京有明店にフードドライブの回収場所を設置。それを皮切りに、神奈川県内の店舗(横浜、川崎など)や新宿店などにも活動が広がっています。

ファミリーマートはすでに全国47都道府県の店舗でフードドライブを実施し、全国最大規模を誇っています。

そのほか高島屋JA日本赤十字社なども、それぞれの地域で積極的な活動を展開しています。

日本女子大学、実践女子大学、神戸大学など、学校とフードバンクが連携してフードドライブを実施する例も出てきました。

フードドライブに向いている食品ってどんなもの?

「うちにも余っている食品があるから寄付しようかな?」

そう思ったら、まずその食品がフードドライブに向いているかどうかを確認しましょう。

未開封でも現時点で食べられても、受け付けてもらえない食品もあるので、注意が必要です。

フードドライブに向いている食品とは

フードドライブに向いている食品とは

フードドライブの対象になる食品は、安全で品質が確かであること、配布された人々が安心して食べられることが前提です。

衛生面で問題がないのは当然として、保存や管理、配送のことも考慮すると一定の条件がつきます。

たとえば横浜市の「フードバンク・フードドライブ活動の推進」のページには家庭からの寄付を受け付ける食品について、このように書かれています。食品の例も載せておきますので参考にしてください。

ご提供いただける食品

未開封(内装が破損していない)かつ賞味期限(要明記)が2か月以上残っている常温保存可能なもの

受付できる食品

  • 穀類(白米、玄米、アルファ米、小麦粉など)
  • 缶詰(肉、魚、果物など)
  • インスタント・レトルト食品(カレールー、カップ麺など)
  • お菓子(チョコレート、クッキー、せんべいなど)
  • 調味料(食用油、砂糖、塩、みりん、料理酒など)
  • 乾物(そうめん、パスタ、海藻など)
  • 飲料(ジュース、お茶、水など)

※長期保存が可能なお米、砂糖、塩は、賞味期限の記載はないですが、受付可能です。

出典:フードバンク・フードドライブ活動の推進 横浜市 (yokohama.lg.jp)

フードドライブに向かない食品とは

フードドライブに向かない食品とは

フードドライブに向かない食品の具体例を、同じく横浜市の案内から引用します。参考にしてください。

受付できない食品

  • 賞味期限が2か月を切っているもの
  • 開封されているもの
  • 冷凍、冷蔵保存のもの
  • 生鮮食品(生肉・魚介類・生野菜)
  • アルコール
  • ペットフード

出典:フードバンク・フードドライブ活動の推進 横浜市 (yokohama.lg.jp)

フードドライブを実施するには

フードドライブを実施するには

環境省の「実施の手引き」を参考にする

自分が所属する職場や団体で、フードドライブを実施してみたい。

そう考える人のために、環境省が「フードドライブ実施の手引き」を公開しています。

手引きには、「フードドライブの実施手順」「はじめての実施でも円滑に実施するポイント」「フードドライブの実施上の課題と解決策」「参考となる情報源」などが掲載され、わかりやすく実践的な内容になっています。

出典:フードドライブ実施の手引き (env.go.jp)

わかりやすく実践的な内容なので、ぜひ参考にしてください。

地方自治体のマニュアルを参考にする

すでに紹介した横浜市のほか、群馬県や宮崎県もフードドライブのマニュアルを公開しています。

マニュアルは以下のページから入手することができます。

群馬県:https://www.pref.gunma.jp/04/cp01_00006.html

宮崎県:https://www.pref.miyazaki.lg.jp/junkansuishin/kurashi/shizen/20160729155545.html

フードドライブとSDGs、環境問題への貢献

フードドライブとSDGsの関係

フードドライブは、SDGsや環境問題に関するいくつかのゴールに関係しています。それぞれのゴールについて説明していきます。

SDGsとは持続可能な開発目標のこと

SDGsとは「持続可能な開発目標」のこと。2015年に国連で採択された、2030年までに達成すべき世界共通の目標です。

SDGsは、17のゴールと169のターゲットから構成され、SDGsは、貧困や飢餓、健康や教育、ジェンダーやエネルギー、気候変動や平和など、人類や地球にとって重要な課題に取り組むことを目指しています。

出典:https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html

フードドライブとSDGsの関係

フードドライブは、SDGsのうち、以下のゴールに関係しています。

ゴール2:飢餓をゼロに

ゴール2は、飢餓を撲滅し、全ての人々が栄養のある食事を摂れるようにすることを目指しています。
フードドライブは、未利用食品を寄付することで、食料不足や栄養不良に陥った人々に食料が届けられる手助けをします。

ゴール12:つくる責任、つかう責任

ゴール12は、持続可能な消費や生産のパターンを確立することを目指しています。
フードドライブは、未利用食品を有効活用することで、まだ食べられるのに捨てられる食品の削減や、それにまつわるコストの削減に役立っています。

ゴール13:気候変動に具体的な対策を

ゴール13は、気候変動に対応するための緊急かつ強力な行動を取ることを目指しています。
フードドライブは、未利用食品の廃棄によって発生する温室効果ガスの排出量や水資源の消費を減らすことで、このゴールに貢献します。

出典:https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html

環境問題対策としてのフードドライブ

環境問題対策としてのフードドライブ

フードドライブは、環境問題への対策にもなります。

内容的にはSDGsと重なる部分も多いですが、フードドライブが環境に与えるインパクトはどのようなものなのか、具体的に見てみましょう。

地球温暖化の防止

フードドライブは、食品ロスの削減によって地球温暖化防止に役立ちます。

食品ロスという現象は、生産から廃棄までの過程で多くのエネルギーや資源を消費し、温室効果ガスを排出しています。

実際、国連の報告書によると、食品ロスにおいて排出される温室効果ガスは世界全体の8~10%を占め、自動車から排出される量とほぼ同じだとされています。

また、食品ロスを国に見立てると、世界第3位の温室効果ガス排出源となるというデータもあります。

したがって、フードドライブを通じて食品ロスを削減することは、地球温暖化の防止につながり、気候変動対策として非常に効果的です。

水不足の防止、水資源の確保

フードドライブによって廃棄食品を減らすことは、水不足の防止、水資源の確保にも貢献します。

食料自給率の低い日本は、とくにその責任が大きいのです。

日本の食料自給率は、38%、カナダ266%、オーストラリア200%、アメリカ132%、フランス125%、ドイツ86%、イギリス65%、イタリア60%、スイス51% となっており、我が国の食料自給率(カロリーベース)は先進国の中で最低の水準となっています。

出典:食料自給率:関東農政局 (maff.go.jp)

食料の多くを輸入に頼っている日本は、間接的に膨大な量の他国の資源を使っています。

ある食料を自国で生産した場合に必要な水の量をバーチャルウォーターといいますが、日本は食料と一緒にバーチャルウォーターも大量に輸入しているわけです。

つまり、大量の食品ロスを生み出すことは、大量の水をムダに捨てることにもなります。

したがって、フードドライブで食品ロスを削減することは、世界の水資源の確保にも貢献します。それは巡り巡って私たち自身にも恩恵をもたらすのです。

まとめ

フードドライブは、家庭で余った食品を必要とする人々に届けることで、食品ロスや貧困問題に大きな効果をもたらします。

この記事では、フードドライブの目的や効果、フードドライブとフードバンクの違いや関係性、フードドライブがSDGsや環境問題にどのように貢献しているか、といったことを解説しました。実施事例もご紹介しました。

フードドライブについての基本的なことをマスターしていただけたことと思います。

フードドライブは、個人が気軽に参加できる社会貢献活動です。

あなたの住む町やその周辺でも、きっとフードドライブが実施されているはず。家に眠っている食品があったら、さっそく寄付してみませんか?

-食品ロス