日本人は毎日茶碗1杯分の食べ物を捨てている。
そんなショッキングな事実を知ると、自分にできることをしたいという気持ちになりますよね。
それと同時に、食品ロスについての基本的な知識も持っておきたいもの。
食品ロスとはそもそも何か、どんな場面で発生するのか。フードロスと言葉は似ているけれど同じ意味なのか、違う意味なのか。
そして、SDGsの中で、食品ロスの問題はどのように位置づけられているのか。
ひととおり読んでいただけば、まわりの人にも食品ロスについて語れるようになります。すでに知識のある方も、復習のつもりでお読みくださいね。
食品ロスとフードロス、それぞれの意味と違いは?
食品ロスとは何か
食品ロスとは何か。農林水産省のWebサイトを参考にしながらひもといていきましょう。
簡単に言うと、「食品ロス」とは本来食べられるのに捨てられてしまう食品のこと。
食品ロスには、大きく分けて「事業系食品ロス」と「家庭系食品ロス」があります。
事業系食品ロスとは、事業活動を伴って発生する食品ロス。
たとえば、生産農家で捨てられる規格外の野菜や果物、食品加工工場で捨てられる食材(パンの耳やおからなど)や返品分、小売店での売れ残りや破損品、飲食店で無駄になった食材や残飯などがあります。
家庭系食品ロスとは、各家庭で発生する食品ロス。私たちが日々の生活の中でムダにしてしまう食品です。
料理の食べ残し、使い切れないうちに傷んだ野菜、賞味期限・消費期限切れの食品など、もったいないと思いつつ、捨ててしまったりしますよね。
日本で発生している食品ロスは年間522万トン(令和2年度推計値)
日本で年間に発生する食品ロス量は、522万トン(令和2年度推計値)。
そのうち事業系食品ロスは53%、家庭系食品ロスは47%と、ほぼ同じくらいの量になっています。
また、日本の国民1人当たりの食品ロス量は1日約113g。なんと、ほぼ茶碗1杯のごはんを毎日捨てている計算です。(茶碗1杯のごはんは約150g)
そして、年間で約41kgの食品を捨てています。これは、年間1人当たりの米の消費量に近い量だそうです。
※令和5年6月の農林水産省の発表では、食品ロス量の令和3年度推計値は前年より1万トン増加して523万トン。そのうち事業系は279万トンでプラス4万トン、家庭系は244万トンでマイナス3万トンとなりました。
フードロスとは何か
食品ロスと似た言葉に、フードロスがあります。食品ロスとフードロスが同じ意味で使われているケースもたまに見かけます。
でも、英語圏で使われるフードロス(food loss)という言葉の意味は、日本でいう食品ロスと完全に同じではないので、注意が必要です。
ポイントのひとつは、サプライチェーンのどこに視点を置くかということ。サプライチェーンとは、「商品や製品が消費者の手元に届くまでの一連の流れ」を表す言葉です。
たとえばFAO(国際連合食糧農業機関)が公開している資料では、「フードロスとはサプライチェーンの中の生産、収穫後、加工の段階で、人間が食べられる食品の量が減少すること」と定義しています。
そして、「サプライチェーンの最後の段階、小売業やエンドユーザーの行動に関連したフードロスは、フードウェイスト(food waste)と呼ばれる」というふうに、区別しています。
※フードロスのlossの訳語は損失。捨てられることで、食品の量が本来得られる量よりも減少するという意味合い。フードウェイストのwasteの訳語は無駄。捨てられることで、食品が無駄になるという意味合い。(筆者による補足)
出典:Global food losses and food waste (fao.org) 2.1 Definition of food losses and food waste(フードロスとフードウェイストの定義)
ただし、この定義はあくまでも一例です。Wikipediaによれば、食品ロスに関して「国際機関、州政府、事務局などの専門機関は、独自の定義を使用できる」そうです。
フードロスとフードウェイストを合わせたのが「食品ロス」
一方、日本で使われている「食品ロス」という言葉は、サプライチェーン全体を通じた、本来食べられる食品の廃棄を意味しています。つまり、そこにはフードロスとフードウェイスト両方の要素が含まれているのです。
食品ロスと、FAOが定義づけたフードロス・フードウェイストの関係を図式化すると、次のようになります。
食品ロスとSDGsの17の目標
2018年のFAOのレポートによれば、世界全体のフードロスは、生産された全食品の3分の1にものぼるといわれています。
食品ロス(フードロスとフードウェイスト)を削減することは、SDGs(持続可能な開発目標)の達成にも貢献します。
SDGsは次の17の目標で構成されています。
では、SDGsの中で食品ロスととくに関係が深い部分を確認してみましょう。
目標12「持続可能な生産と消費」のターゲット3
目標12には全部で11のターゲットがありますが、その中の3番目に、食品ロスに関する指標が示されています。
12.3 2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる。
食品ロスの削減に関して、小売・消費レベル(フードウェイスト)と生産・加工・流通レベル(フードロス)では求められる度合いが違っています。
それだけ小売・消費側にまだまだ努力の余地があるということかもしれませんが、今回あたった資料では、詳細はわかりませんでした。
目標2「飢餓をゼロに」
食品ロス問題への取り組みは、目標2「飢餓をゼロに」とも深い関係があります。
2021年、世界の飢餓人口は8億2800万人。新型コロナウィルスのパンデミックが始まった2019年と比べて1億5000万人増えています。
出典:https://www.unicef.or.jp/news/2022/0136.html
食べられるものを大量に捨てる国や地域がある一方で、最低限の食べ物も得られない国や地域がある。これは、公平な分配ができていないということです。
食品ロスを減らすと同時に、「食料を必要とする人たちに届ける」という形で有効活用できれば、飢餓人口を減らすことにもつながります。
目標13「気候変動に具体的な対策を」
食品ロスの削減は、気候変動の影響を抑える上でも重要な課題です。
食品ロスで生じる生ゴミは、処理される過程で、気候変動の元凶といわれる温室効果ガスを大量に排出します。ゴミを燃やせばCo2が発生し、埋め立てればメタンガスが発生してしまうのです。
温暖化を軽減するには、食品ロスを減らし、ゴミの量そのものを減らすことが必須なのです。
食品ロス削減がSDGsに与える波及効果は大きい
SDGsの中でも食品ロスと関係の深い目標を見てきましたが、ほかにも「貧困をなくそう」「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」「海の豊かさを守ろう」「陸の豊かさを守ろう」など、食品ロスの削減が貢献できる目標はいくつもあります。
そして、SDGsの目標はそれぞれがつながっています。
食品ロスの問題も、サプライチェーンはもちろん、気候変動や市場の動きなどともつながりあい、循環しています。食べること、働くこと、健康に人間らしく生きることなど、さまざまな人間の営みとも切り離せません。
最終的には、SDGsで食品ロスがまったく関係しない目標はないといえます。食品ロスの削減が進めば、SDGsの達成度を上げるうえで大きな力となるのは間違いありません。
まとめ
食品ロスとフードロスの意味や違い、SDGsとの関連性などについてレポートしました。
食品ロス削減のために、消費者としての私たちができることは、たとえば賞味期限が近いものから選んで買うこと、無駄に買い過ぎないこと、買った食品を食べきること。
日本の食品ロスの約半分は家庭系の食品ロスです。私たちがちょっと行動を変えるだけでも、それが積み重なったときのインパクトは大きいはずです。
あなたも今日の買い物、今日の食事からあらためて意識してみませんか?