昔は人造バターと呼ばれ、バターの代替食として親しまれてきたマーガリン。
でも、バターとマーガリンの違いは?と聞かれて、正確に答えられる人は意外と少ないのではないでしょうか。
そこで今回は、バターとマーガリンの違いについて、いろいろな角度から調べてみました。
読めば疑問がスッキリ解消され、使い方や商品選びにも迷わなくなりますよ。
バターとマーガリンの違いを簡単に言うと?
バターとマーガリンの違いはいろいろありますが、一番の違いは「含まれる油脂の種類と割合」です。それぞれ国で定められた成分規格や製造方法があるのです。
簡単に言うと、バターと名づけてよいのは乳脂肪分が80%以上含まれたものだけ。それ以外の、植物油脂を主体に作られたものはマーガリン類です。
マーガリン類は「マーガリン」と「ファットスプレッド」に分かれ、油脂の含有率が80%に満たないものがファットスプレッドと呼ばれます。
バター | マーガリン類 | |
マーガリン | ファットスプレッド | |
乳脂肪分80%以上 | 油脂含有率80%以上 | 油脂含有率80%未満 |
【原料の違い】バターは牛乳、マーガリンは植物油脂が主原料
バターの原料は乳脂肪、つまり牛乳の脂肪分です。食塩を加えた有塩バターと何も加えていない無塩バターがあります。
マーガリンの原料は植物油脂(コーン油、なたね油、紅花油、大豆油、パーム油、綿実油など)に、乳製品、食塩、乳化剤などを加えたものです。
商品によってはプラントベース100%(純植物性)のものもあります。香料や着色料などの添加物の有無も、商品によって違います。
【製造方法の違い】バターはシンプル、マーガリンは「乳化」が必須
バターは原料の牛乳からクリームを分離して撹拌し、できた乳脂肪の粒を凝集させて作ります。
市販の生クリーム(乳脂肪だけのもの)を使えば、家庭でバターを手作りすることもできます。
作り方は簡単。生クリームをふた付きの容器に入れて2~8分振り続けると、中身が白い水分とかたまりに分かれます。このかたまりがバターです。
マーガリンは、植物油脂に水、食塩その他(乳成分やビタミンなど)を加えて乳化させ、冷やし固めて作ります。
乳化とは、そのままでは混ざらない水と油を、油の粒子を細かくして攪拌することによって混ぜ合わせることです。
【栄養成分の違い】バターはビタミンAが豊富
バターとマーガリン類の栄養成分は次のとおりです。
バターとマーガリン類の栄養成分の比較(100g当たり)
有塩バター | |
エネルギー | 700Kcal |
水分 | 16.2g |
たんぱく質 | 0.6g |
脂質 | 81.0g |
炭水化物 | 0.2g |
カルシウム | 15mg |
ビタミンA(レチノール活性当量) | 520μg |
ビタミンB1 | 0.01mg |
ビタミンB2 | 0.03mg |
食塩相当量 | 1.9g |
マーガリン | |
エネルギー | 715Kcal |
水分 | 14.7g |
たんぱく質 | 0.4g |
脂質 | 83.1g |
炭水化物 | 0.5g |
カルシウム | 14mg |
ビタミンA(レチノール活性当量) | 25μg |
ビタミンB1 | 0.01mg |
ビタミンB2 | 0.03mg |
食塩相当量 | 1.3g |
ファットスプレッド | |
エネルギー | 579Kcal |
水分 | 30.2g |
たんぱく質 | 0.2g |
脂質 | 69.1g |
炭水化物 | 0.0g |
カルシウム | 8mg |
ビタミンA(レチノール活性当量) | 31μg |
ビタミンB1 | 0.02mg |
ビタミンB2 | 0.02mg |
食塩相当量 | 1.1g |
※日本食品標準成分表2020年版(8訂)を元に作成
バターとマーガリンの栄養成分の大きな違いは、バターにはビタミンAがたっぷり含まれていること。ビタミンにAは皮膚や粘膜、目の健康を保つ働きがあります。
トランス脂肪酸はどちらにも含まれている
バターもマーガリンも「油脂類」に分類される食品なので、当然、脂質の割合が多いです。
脂質を構成する成分に脂肪酸がありますが、その中でも「トランス脂肪酸はどうなの?」と気になる方も多いでしょう。トランス脂肪酸は体に悪いので、あまり摂らない方がよいといわれていますよね。
結論から言うと、トランス脂肪酸は、バターにもマーガリンにも含まれています。また、近年はバターよりトランス脂肪酸の少ないマーガリンも登場しています。
くわしくはこちらの記事をご覧ください。
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含まれる脂質の量はどちらも同じくらいですが、原料が違うので、脂肪酸の構成やコレステロールの量も変わってきます。
【味や使い方の違い】バターはこってり、マーガリンはあっさり
バターとマーガリンは味わいも異なります。
バターはこってりとした濃厚な風味が特徴。マーガリンはそれより軽めのあっさりした風味です。
バターは加熱しても味が変わらないので、炒め物や煮込み料理にコクを出したいときなどにも重宝します。
マーガリンは、サンドウィッチなどに使えば、パンに塗りやすく具材の味をじゃましないというメリットが活きるでしょう。
パンやお菓子を手作りするときも、どちらを使うかによって味や食感が変わります。これは好みの問題なので、自由に使い分けるとよいでしょう。
【賞味期限の違い】賞味期限に大きな差はない
一般的なバターは、冷蔵庫で保存された開封前のものなら約6カ月といわれています。マーガリンも同じです。
バターの開封後の賞味期限(美味しく食べられる期間)は2週間程度、マーガリンの開封後の賞味期限は1か月程度といわれています。
バターもマーガリンも、開封して空気にふれると酸化が進みます。
時間が経つほど過酸化脂質などが多く発生して「体に悪い油」になってしまうので、開封したら早めに食べきることが大切です。
保存方法は、どちらも必ず冷蔵で保存します。バターは冷凍保存も可能ですが、マーガリンの冷凍保存は変質しやすいのでやめておきましょう。
バターとマーガリンはどちらが体に悪い?
「バターとマーガリンのどちらが体に悪いのか知りたい」というニーズもあるようですが、これに対して、単純に「バター」とか「マーガリン」とかの答えは出てきません。
なぜなら、どちらも管理や食べ方が悪ければ体に悪いからです。
たとえば開封したものを常温で長く放置したり、あるいは半年以上冷蔵庫に入れっぱなしにしたりすれば、酸化が進んだり場合によってはカビが生えたりして、健康によくないものになります。
また、マーガリンは、商品によってはトランス脂肪酸が多量に含まれたものがあります。
もしそういうマーガリンを毎日たくさん食べ続ければ、体内の悪玉コレステロールが増えて、結果として動脈硬化や心疾患などにつながる危険性があります。
しかし、いまはトランス脂肪酸をバターよりも低く抑えたマーガリンも増えてきたので、一概に「マーガリンだから悪い」とはいえません。
「保存期間の目安を守る、適度な量を食べる、良質な商品を選ぶ」といった点に気をつければ、どちらも美味しく体に良い食べ方ができるのです。
バターとマーガリンはどっちが太る?
バターとマーガリンはどちらも脂質が多くカロリーも高めで、いかにも太りそうなイメージがありますね。でも実は、どちらも肥満の原因にはなりにくいのです。
なぜなら、近年になって、肥満の原因は糖質であることがわかってきたからです。
糖質は炭水化物の中に含まれますが、栄養成分表を見ればわかるように、バターの炭水化物は100g中0.2g、マーガリンの炭水化物は0.5gと、大変低いです。
したがって、よほど食べ過ぎなければ、バターやマーガリンが原因で太ることはありません。
逆にいえば、どちらも食べ過ぎた場合は悪玉コレステロールが増えて、それが肥満につながることはあります。
ケーキやドーナッツなど甘いお菓子の食べ過ぎは、バターやマーガリンと一緒に糖質もたくさんとることになるので、ダブルで太りやすくなります。
バターとマーガリンはどちらが環境にやさしい?
バターもマーガリンも、環境にやさしい商品とそうでない商品が混在しているので、一概にどちらがやさしいとはいえません。
また、環境への影響を判断するにはさまざまな情報が必要です。
たとえばバターなら、原料の牛乳がどのような土地でどのように飼育された牛からとれたものなのか。マーガリンなら、原料の植物油脂がどのような土地でどのように栽培された植物から抽出されているのか。
そして、製造プロセスでどれくらいのエネルギー資源を使い、どれくらいの温室効果ガスや廃棄物を排出しているか、働く人々への配慮はどうか、等々。
もちろん全部を知ることはできませんが、企業の公式サイトやメディアなどでもその一端を知ることはできますよね。
その中で、環境や社会に対する配慮があり、企業姿勢に賛同できる企業があれば、そこの商品を選んで買うのがおすすめです。
いわゆるエシカル消費ですが、本当に持続可能な社会をつくるには、こうした行動が今後ますます重要になっていくでしょう。
まとめ
バターとマーガリンの違いについて、さまざまな角度から調べてみました。
原料、製造法、風味などいろいろな違いがありますが、「実は太りにくい」とか、意外な共通点もありました。
結局、体に良いか悪いかは食べ方次第なので、極端なことをしない心がけが大切ですね。
また、商品の多様化も進んでいるので、「バター」とか「マーガリン」とかひとくくりに考えず、柔軟につきあっていくとよいかもしれません。