イタリアはピザやパスタへのコオロギパウダー使用をなぜ禁止したのか

イタリアピザやパスタ昆虫パウダー禁止

EUでも広がる気配を見せていた、コオロギなどの昆虫食

しかし、イタリア政府がそこに待ったをかけました。

「ピザやパスタに昆虫の粉末を入れることを禁止する」と発表したのです。

そこにはどんな背景があるのでしょうか。なぜ閣僚はわざわざ記者会見を開いたのでしょうか。周辺情報も含めて、調べてみました。




「イタリア製のピザやパスタに昆虫は入れない」

イタリア製のピザやパスタに昆虫は入れない

イタリア政府は「コオロギ、トノサマバッタ、昆虫の幼虫の粉末をピザやパスタに使うことは禁止」とし、スーパーマーケットの棚でも、それらの昆虫食品とは分離して陳列させるように規制をかけていく方針だ。

フランチェスコ・ロロブリジーダ農業大臣は「基本的に、それらの粉末はイタリアで作る食品に入れない」と言っている。

2023年3月24日付の記事でこのように報じたのは、イギリスのThe Times紙です。

出典:Italy bans insect flour from its pasta despite the eco buzz (https://www.thetimes.co.uk/)

EUに「新規食品」として認められた食用昆虫

EUでは、2018年から昆虫が「新規食品」として認められています。

2021年にはミールワーム(ゴミムシダマシ科の幼虫)とトノサマバッタが、2022年にはコオロギが新規食品として認可されました。

EUにはそれ以前から、いくつかの国で昆虫食品が販売されていた背景もあります。

3種類の食用昆虫が正式に食品としての安全性を認められたことで、関連業界には「昆虫食拡大にはずみがつくのでは」という期待があったようです。

しかし、今回イタリア政府は、これらの昆虫すべてを「イタリア製のピザやパスタに入れない」と明言しました。この発表に衝撃を受けた関係者は多いことでしょう。

「EUのピザやパスタに必ず昆虫パウダーが入る」というデマ

「昆虫、ピザ、パスタ」といえば、2023年1月にTwitterでこんなツイートが流されたのをご存じでしょうか。

「EU全域で、ピザ、パスタ、シリアル、ビスケット他に粉砕されたコオロギなど、虫の添加物を必ず入れると決定した」

このツイートは1万いいね、5000以上のリツイートを獲得して大きな反響を呼んだのですが、リンクが貼られていた英語の記事をのちにBuzzFeedNewsが検証して、デマと判明しました。

リンク先の記事にも欧州委員会の公式ウェブサイトにも、そんな記述はなかったのです。

でも、このツイートはたくさんの人に「EUのピザやパスタには全部昆虫が入れられる!」という誤った思い込みを与えてしまいました。これは相当なイメージダウンです。

gakei
gakei
私も誰かのリツイートで見かけて、一瞬信じそうになりました(ダメじゃん)。

もし、あなたの周りにこれを信じている人がいたら、訂正してあげてください。

イタリアの国民は「昆虫食推し」に反発していた

イタリアの国民は昆虫パウダー推しに反対していた

実は、昆虫パウダーを料理に使う動きがエスカレートすること対しては、イタリア国民からの「激しい反対」があったといいます。

反対派の人たちは、昆虫食を広めようとする勢力に、押しつけ的な空気を感じたのでしょうか。自分たちのソウルフードに、望まない昆虫パウダー入りのものが増えることに反発したのでしょうか。あるいはその両方?

前出のタイムズの記事は、「イタリア政府は、イタリア料理に昆虫のイメージがついてはいけないと危惧して記者会見を開いた」とも書いています。

さきほどもイメージについて書きましたが、料理のイメージは本当に大事ですね。

gakei
gakei
食は生きる糧であると同時に文化でもあり、現代ではアートの世界とも重なるくらい、精神的かつデリケートなものになっていますよね。

「サステナブルな昆虫パウダーの消費を促進すべき。ピザやパスタは粉ものだから相性がいい。どんどん入れよう」

そんな推進派の動きは、文化的背景や人々の心情に対して、どれだけ配慮できていたでしょうか?

このままではイタリア料理という文化そのものが危ない。そんな危機感が、今回のイタリアの「昆虫拒否」の決定と、公式発表につながったのかもしれません。

追記:
イタリア政府は2022年3月29日、「培養肉などの合成食品禁止の法案を支持する」ことも表明しました。

農業大臣のロロブリジーダ氏は、「合成食品では、品質やウェルビーイング、イタリアの料理やワインの文化と伝統を守ることができない」と語ったそうです。

-その他
-