コオロギ食品にアレルギー表示義務がない理由。エビやカニと何が違うのか

コオロギ食品アレルギー表示

昆虫食品にアレルギーのリスクがあることは、FAO(国際連合食糧農業機関)をはじめ、公的な機関も認めています。食用コオロギも例外ではありません。

でも、日本では現在、コオロギ食品にアレルギーの表示義務はありません。

「なぜ昆虫にはアレルギー表示義務がないの?」

「コオロギと近い成分を持つエビやカニ製品にはアレルギー表示義務があるのに、何が違うの?」

そんな疑問にお答えするために、消費者庁の資料などから、昆虫食のアレルギー表示についての情報をまとめてみました。




コオロギ含む昆虫食品にアレルギーの表示義務がない理由

コオロギ含む昆虫食品にアレルギーの表示義務がない理由

現在、日本で、コオロギも含めた昆虫食品にアレルギー表示の義務がない理由は、昆虫食品が「特定原材料等」のリストに入っていないからです。

消費者庁は、昆虫食品のアレルギー表示について、次のような指針を示しています。

Q13「昆虫食に食物アレルギー表示は必要ですか。

A現時点(令和3年8月)では、「昆虫」は食物アレルギー表示の対象として定められている特定原材料等に該当しないため、食物アレルギー表示は必要ありません。

なお、例えば、事業者において、根拠に基づき、一括表示枠外に「本品に使用されている●●(昆虫由来の原材料を表示)は、甲殻類と類似した成分が含まれています。えびやかににアレルギーをお持ちの方はお控えください。」等、注意喚起表示を行うことは可能です。

(プラントベース食品関連情報 | 消費者庁 (https://www.caa.go.jp/)より引用)

「昆虫は『特定原材料等』に当てはまらないのでアレルギー表示は必要ないが、根拠があるなら、事業者の判断で消費者に注意を呼びかけてよい」ということですね。

アレルギー表示が求められる「特定原材料等」の基準とは

過去に一定の頻度で重篤な健康危害

それでは、ある食材が「特定原材料等」に指定されるには、どんな条件があるのでしょう。

簡単に言うと、「過去に、一定の頻度で、重篤な健康危害が生じた原材料」であることが条件のようです。

「これまでの実態調査等を基に、過去に一定の頻度で血圧低下、呼吸困難又は意識障害等の重篤な健康危害が見られた症例から、その際に食した食品の中で明らかに特定された原材料について、アレルギー物質を含む「特定原材料等」として指定しています。」

(消費者庁 別添 アレルゲンを含む食品に関する表示 より引用)

コオロギ食品などが注目を浴びているとはいえ、日本で昆虫食を好む人は少数派。

その分、重篤なアレルギー(アナフィラキシー)の症例も少なく、設定されている「特定原材料等」の基準を満たしていない……という状況なのです。

「特定原材料等」に指定されている28品目とは

特定原材料等にはどんな品目があるのか

現在、特定原材料等は、「特定原材料」(表示義務がある)と「特定原材料に準ずるもの」(表示が推奨される)を合わせて28品目あります。

具体的には、次のような食材です。

食物アレルギー表示対象品目

表示 用語 品目
義務 特定原材料(7品目) えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ)
推奨 特定原材料に準ずるもの(21品目) アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン

※特定原材料等の範囲は、原則として、日本標準食品分類の番号で指定されている範囲のものを指します。

出典:消費者庁「加工食品の食物アレルギー表示ハンドブック

アレルギー表示が義務になるか、推奨になるかは「実際にどれくらいの数の発症例があり、どれくらい症状が重いか」によって決まります。

食品中に特定原材料等を含む旨の情報提供をアレルギー表示によって行うに当たっては、実際のアレルギー発症数、重篤度等に差異があるため、「食品表示基準」(平成27年内閣府令第10号)で法令上表示を義務付けるものと、通知で表示を推奨するものとに分けているところです。(同ハンドブックより引用)

市販のコオロギ食品の表示はどうなっているか

市販のコオロギ商品の表示はどうなっているか

実際に販売されているコオロギ食品の表示がどのようになっているのか、いろいろなオンラインショップを調べてみました。

コオロギ食品を扱うオンラインショップで、サイトのページにアレルギーに関する記載がはっきりと確認できたのは、グリラス、クリケットファーム、TAKEO、bugoom(バグーム)、パスコのコオロギ・カフェシリーズなどでした。

無印良品のオンラインショップが扱う「コオロギせんべい」と「チョコクランチ」は、販売ページの「商品表示情報」のリンクをクリックすると、アレルギー表示が確認できます。

コオロギせんべいの商品表示はこちら https://www.muji.com/

INNOCECTのオンラインショップは、商品説明の部分にはアレルギー関係の記載がありませんが、商品画像を見ると、パッケージの裏側にアレルギーへの注意喚起があるのがわかります。

フューチャーノートのコオロギ食品の場合、「チョコクランチ」という製品には「(注)エビやカニに似た成分を含みます。」という記載があります。

しかし、同社の「クリケットフラワー(コオロギパウダー)」や、コオロギパウダーが入った「携帯たんぱくチップス」のページには、アレルギー関係の記載が見当たりません。携帯たんぱくチップスのパッケージの画像はあり、そこに細かい表示があるようですが、拡大しても文字が判別できませんでした。

もちろん、どのショップにも法律上の問題はありません。

形式の違いはありますが、おおむねどのショップでも、何らかの形でアレルギーへの注意喚起が行なわれていることがわかりました。

昆虫食のデメリットの記事でも書きましたが、アレルギー表示のない昆虫食品でも、アレルゲン(アレルギー物質)が入っていないとは限らないので、そこは注意が必要です。

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まとめ

食品としての歴史が浅いコオロギ食品(昆虫食品)は、「過去に、一定の頻度で、重篤な健康危害が生じた」という条件に当てはまらないために、アレルギー表示の対象外になっていることがわかりました。

でも、食物アレルギーのある人にとって、自分が食べようとするものにアレルゲンが含まれているかどうかは、絶対に知りたい情報ですよね。

消費者庁の「加工食品の食物アレルギー表示ハンドブック」には、こんな記述もあります。

なお、食物アレルギーの原因物質は、時代の変化と共に変わっていく可能性があるため、実態調査等による科学的な検証を行い、新たな知見や報告が得られれば、適宜、見直しを行っています。

コオロギその他の昆虫食が、この先どこまで広がるかはわかりません。でも「食べる」という人がいる以上、アレルギー表示に関する見直しが進んで、早く、より安心な方向に進むとよいですね。

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