コオロギ食用のデメリット 最低限知っておきたい4つのポイント

コオロギ食用4つのデメリット

コオロギを食用にすることに対して、相変わらずいろいろな論議が交わされています。

コオロギ食を推進する側の人たちは、おもにSDGsの観点から見たメリットを強調。

「少ない環境負荷で効率よく生産できる」「食料不足時代の有力なタンパク源になる」と主張しています。

一方で、さまざまな問題点を挙げて反対する声も少なくありません。

食用コオロギには、実際にどんなデメリットがあるのでしょうか。根拠の不明なものは除いて、最低限知っておきたいことをまとめました。




デメリット1 食用コオロギは見た目やイメージがよくない

デメリット1食用コオロギは見た目やイメージがよくない

「コオロギの見た目が気持ち悪い」

コオロギの見た目は、食用としての普及を妨げる一番の障害といえます。

「気にならない」という人ももちろんいますが、「気持ち悪い」「色や形がゴ〇〇〇に似ていて無理」といった声がネット上にあふれています。

昆虫食に関するアンケート調査でも、「食べたくない」という人が優勢です。(アンケート結果の詳細はこちらの記事をご覧ください。

昆虫食のデメリットとメリット
参考昆虫食のデメリットとメリット一覧!リスク回避のための3つの注意点

昆虫食に関して、いまは大きく意見が分かれている状況です。 「いやだ、避けたい」という人。 「食べたい。実際に食べている」 ...

続きを見る

メーカーも見た目の問題には配慮していて、粉状に加工したコオロギパウダーや、ぱっと見は普通の食品と変わらないコオロギ入りのパン、お菓子も市販されています。

しかし、そこでもまた「コオロギの形が残っていなければ大丈夫」という人と、「形がなくても無理」という人に分かれます。

食わず嫌いの域を超えて「何が何でも食べたくない」という人も少なからずいるのです。

コオロギは不衛生で食用に適さないというイメージ

「細菌やウイルスが多い」「食用に適さない」というイメージも、食用コオロギの持つデメリットといえます。

もともと、私たちがある対象を「嫌い」とか「不快」とか感じるとき、根底には食中毒や感染症を避ける防衛本能があるといわれています。

たしかにコオロギは雑食性で、野生のものは草の葉や野菜から動物の死骸まで食べ、市街地では生ゴミなどもエサにします。当然、有害物質を食べている可能性もあります。

日本で食用にされてきたイナゴ、カイコ、ザザムシ(トビゲラなどの幼虫)、蜂の子などの昆虫に共通するのは、どれも雑食性ではないということです。

gakei
gakei
イナゴは稲、カイコは桑の葉、ザザムシは川の中の藻類、蜂の子は働きバチが運んでくる団子状の昆虫やイモムシだけを食べるんだって。

コオロギを育てる側としては、雑食性だからこそ養殖しやすく、そのままだと食品ロスになる食材をエサにできるメリットなどもあるわけです。

しかし、消費者側にとっては、逆に雑食性であることがネックになっている感があります。

養殖の食用コオロギの場合は、飼料も含めた衛生管理が行なわれているので、細菌やウイルスの問題はクリアしています。ですが、嫌がっていた人が「それなら食べてみよう」となるほど簡単な話ではないのです。

ゴリ押しでなくてもゴリ押しと感じる場合がある

このように、コオロギに対する嫌悪感は根の深い問題です。

「イヤだ」と思っている人は、誰かが熱心に食用コオロギのメリットを語ったり、有名人が食べてみせたりするだけでも「ゴリ押し」と感じることがあるはず。

でも、「コオロギ食は良いことだ。広めたい」と思っている人たちは、その感覚がいまひとつわからない。そうしたギャップがいろいろな対立を生んでいるようにも見受けられます。

gakei
gakei
昆虫を「新規食品」として認めている欧州委員会は「昆虫を食べるか食べないかは消費者が決めることだ」と言ってるよ。コオロギ積極推進派の人も一歩ひく余裕が必要かも。

デメリット2 食用コオロギにはアレルギーのリスクがある

デメリット2 食用コオロギにはアレルギーのリスクがある

甲殻類やダニのアレルギーがある人には危険

コオロギに含まれる繊維質(キチン質)は、エビやカニなどの甲殻類と似た成分であり、アレルギーを発症させるリスクがあります。

甲殻類アレルギーの人だけでなく、軟体動物やダニアレルギーの人も発症のリスクありというデータがあるので、要注意です。

軽い症状で済むならまだしも、アナフィラキシーショックを起こした場合は命にかかわるからです。

gakei
gakei
私の魚卵アレルギー持ちの友だちは、「イクラをちょっとつまんだお箸」を使っただけで唇が腫れあがってたよ。油断は禁物ね。

コオロギ食品にはアレルギー表示義務がない

しかも、食用コオロギも含めた食用昆虫は、原材料のアレルギーに関する表示義務がありません。

なぜなら国の規定では、重篤なアレルギー症状を起こした事例が数も頻度も一定以上にならないと、表示が義務づけられないからです。

ただし、販売元が自主的に注意を促すことはできるので、調べてみると、何らかの説明がついている商品がほとんどです。

gakei
gakei
でもちょっとわかりにくいものもあるから、じっくり確認してね。

アレルギーのリスクを周知徹底すべき

コオロギにアレルギー成分が含まれている以上、「体質によってコオロギを食用にできない人がいる」ということは、もっと広く知られるべきです。

そうでないと、「自覚がないまま食べてしまう」「ゲーム感覚で人に食べさせてしまう」などの危ない行為をなくすのは難しいでしょう。

大きな話題となった例では「2021年、アイドルグループSatanic Panishの撲我(ぼくが)さくらさんが罰ゲームでコオロギを食べた結果、かなり強いアレルギー症状に見舞われた」という実例があります。これについては別の記事で解説しますので、そちらをご覧ください。

デメリット3 コオロギにはプリン体が多いので人によっては要注意

デメリット3 コオロギにはプリン体が多いので人によっては要注意

コオロギにはプリン体が多く含まれているので、高尿酸血症や痛風の人には適さないというデメリットもあります。

西村博之氏などインフルエンサーが根拠を示しながらこれを指摘したこともあり、コオロギとプリン体のことも一時期だいぶ話題になりました。

実際に、コオロギにはプリン体が多いという研究データはあり、そのひとつがこちらです。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23633284/

プリン体が多く含まれる食品はレバー、白子、エビなど他にもいろいろあります。コオロギ食だけを控えるというより、飲食全体でプリン体の摂取が多くならないようにコントロールすることが必要です。

デメリット4 食用コオロギの環境にやさしい飼育はまだ発展途上

デメリット4 食用コオロギの環境にやさしい飼育はまだ発展途上

食用コオロギには飼育面で解決すべき課題もあります。

コオロギの養殖やコオロギ食品の製造を行う企業は、SDGsをふまえて「コオロギの飼育は環境にやさしく効率が良い」とうたっていますが、これは、それを可能にする技術が確立されてこその話。

現状はどうかというと、コオロギの大量養殖には基本的に人手やコストがかかり、環境負荷も大きいため、まだまだ改善が必要なのです。

これらの問題を解決するために、新しいテクノロジーの開発に力を入れている企業を紹介します。

株式会社グリラスは新たな実験に着手したばかり

2023年1月19日付の「IoT※で食用コオロギをスマート飼育。NTT東とグリラスが実証実験」という記事があります。

株式会社グリラスは、食用コオロギの生産を行う徳島大学発のスタートアップです。

その中で、同社生産本部長の市橋寛久氏は、食用コオロギの飼育について、現時点では「人が餌や水を与えていて、効率性が低いと同時に与えるエサの量も人によってばらつきがある」「年間を通じて30℃の温度を保つ必要があるため、電力消費量や環境負荷が膨らむ」「温度管理にも手間がかかる」などの課題があると語っています。

そして、それらを解決するために、「NTT東日本との協業でテクノロジーを活用し、飼育方法の最適化や各種コスト削減、工数のスリム化、環境負荷が少ない飼育を目指していく」とのことです。

出典:https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/yajiuma/1471699.html

各種コスト削減や環境負荷の少ない食用コオロギの飼育は、まだ「目指すべき目標」という段階なのです。

※IoTとは"Internet of Things"の略。モノのインターネット。従来インターネットにつながっていなかったものを接続することによって、離れた場所からのモニタリングやコントロールが可能になる。

株式会社クリケットファームでは効率化、省力化に成果

株式会社クリケットファーム

株式会社CricketFarm(以下、クリケットファーム)は2023年2月8日、既存の養殖場に、新たに省スペース型の養殖設備を開発したことを発表しています。

同社は創業以来、先進技術を活用したスマート養殖システムで食用コオロギの養殖を行っています。具体的には、QRコードでの飼育管理ができる専用アプリセンシング技術での温度・湿度の自動管理などを実現。

新設した養殖設備ではおよそ100㎡で年間最大450万匹のコオロギが生産可能。また、ケース飼いを廃止したため、飼育業務の省力化がさらに進み、少ない面積・人員でも安定したコオロギの生産を目指せるとのことです。

出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000014.000090261.html

クリケットファームでは、飼育の効率化や省力化はかなり進んでいるようです。

しかし、各種作業の自動化や空調管理は電力を必要とします。養殖場の電力消費量や温室効果ガスの排出量はどのくらいになっているのか、気になるところです。

まとめ

食用コオロギに関して、最低限知っておきたいデメリット(根拠の示せるもの)をまとめました。

中でもアレルギーやプリン体のことは大事な情報なので、ひとりでも多くの人に届いてほしいです。

コオロギへの嫌悪感の問題は完全に解消されることはないでしょう。でも、それが不毛な対立や誤った情報の拡散につながることは減っていくとよいですね。

また、コオロギの養殖は本当に環境にやさしいのか、あらゆる面で効率的なのかという点については、これからも情報を追っていくつもりです。

関連記事

-昆虫食
-